僕のHMVデビューは、渋谷店がまだセンター街のいちばん奥まった所にあった頃。
当時の僕は小沢健二やコーネリアス、二人がやっていたフリッパーズ・ギターの影響を絶大に受け始めた頃で、音楽の趣味や購入するCDの数が爆発的に増えていて、
あの頃のHMV渋谷店はそんな僕の格好の学習の場でした。
CDのディスプレイからして他の店とはひと味もふた味も違っていて、
この店独自のディスプレイ展開は見て回るだけで楽しめたものです。
いわゆる売れているミュージシャンや大型新人的なミュージシャンばかりをプッシュするのではなく、バイヤーが自身の感性に従って、たとえ無名の存在であっても「こいつらはスゴイ!」と全面的にプッシュする。
気合いの入り過ぎた手書きPOPやディスプレイ展開が楽しすぎた店でした。
サニーデイ・サービスやキリンジを初めて購入したのもこの店。
そういえばCDのバイヤーという存在を知ったのもこの店が最初でした。
ここと同じくらい通ったWAVEクアトロ店、それにWAVEロフト店、周辺の小さなレコ屋、CDショップを巡る時間は、当時の僕にとってこの上ない幸せな時間でした(当時はあまりタワーレコードには行っていませんでした)。
渋谷と、渋谷の宇田川町周辺は間違いなく僕の音楽的感性を育てた場のひとつでした。
センター街の入り口に移転してからは、
なんだか普通のCDショップになってしまったな…と感じられてならず
徐々に足が遠のいてしまい、最近もしばらく行っていません。
それはHMV的な品揃えが「渋谷系」を経て遍在化し、HMV渋谷店が「特別な場」ではなくなってしまったという事もあるかもしれません。
「ここだから会える音楽」がなくなってしまったというのは
便利になった反面、出会えることの喜びを失ってしまった気がして
なんとも複雑な気分になったものです。
それでも僕にとってHMV渋谷店が、何かを象徴する存在であったことは間違いなく、
今回の閉店には寂しさを禁じ得ません。
HMV渋谷店。あなたには本当にたくさんの事を教えてもらった。
音楽の楽しみ、掘り下げることの興奮、広げてゆくことの愉悦…。
ありがとう。
あなたがいたから、今の僕がいる。
ラベル:HMV