2011年02月11日

村田にヤラレろ!冷たい熱帯魚

園子温監督作『冷たい熱帯魚』観ました!
(テアトル新宿)

ここ何年もの間、お隣韓国の犯罪/ヴァイオレンス映画のあまりのハイアベレージっぷりを指をくわえて羨ましがるしかない状況が続いていましたが、
ついに日本映画は最狂の犯罪/ヴァイオレンスムービーを獲得しました!

いや去年も日本には『十三人の刺客』『ヒーローショー』『告白』という
「どーかしてる!」という振り切れた作品があり(それより前には『実録連合赤軍』)、
そのどれも僕は大好きなのですが
本作『冷たい熱帯魚』はそのどれもを凌駕する新たな金字塔でしょう。
(そしてそれは臓物でデコレーションされている!)

なんといってもでんでんですよ。
あんなにパワフルで、人生を楽しんでいるように見えて、やたらと包容力もある人物が身近に現れたら、簡単に騙される自信が僕にはあります!
だからこそ吹越満演じる社本があれよあれよという間に殺人に巻き込まれ、脅され、さらなる殺人に手を貸さざるを得ない状況に追い込まれる様を見て、
僕は怖くて仕方なかったです。

いや「騙す」って書いたけど
でんでん演じる村田としては「騙す」という感覚は全くないのでしょう。
自分の欲望にあまりに忠実であるが故に
他人を巻き込みもするし、
あまりに忠実であるが故に他人を排除もする。

「良心の呵責」なんてものはない。
そこには「なんてことはない殺人(或いは暴力)」と
「作業としての人体解体」があるだけ。

まったく日本映画はなんというモンスターを獲得したのでしょう!
去年『十三人の刺客』において松平斉韶という悪役が出現したばかりなのに
現代日本において『ダークナイト』のジョーカーをも軽く凌ぐ希代のモンスターが連続して現れるなんて!

どうしてここまで倫理を喪失できるのか。
その村田のルーツは父親との関係にあるという事が描かれる。
村田は父親によってその獣性を覚醒され、
そして村田の周りの人間は、村田によって暴力性や残忍さを暴かれる。
(その究極が社本の娘でしょう)
このあたりは黒沢清監督の傑作『CURE』を思い出したりしました。

さて、この映画は確かにひどいです。
人の「死」をどこまでも美しく描き、
夫が死んだり、妻が死んだり、犬が死んだり、ライバルが死んだと言っては「なんとかぁぁぁ!」と泣き叫ぶ映画ではありません。
スクリーンは血とおっぱいと臓物で塗りたくられ、
思わず口元を手でおさえたくなるほど「ヒドい」映画です。

血やおっぱいや臓物だけではない。
「感情」という名の衣服を剥ぎ取られ、陵辱され続ける2時間半。

だからこそ自分のことを「善良な人間」「健全な人間」と思って疑わない人にこそ観てほしい。
村田はあなたの衣服を剥ぎ取り、縛り上げ、あなたの恥部を覗き見るだろう。
事が終わった後、あなたは何を思うのか。

僕は思った。
「生きたい!」と。
「あらゆる暴力はやっぱりろくなもんじゃねぇ」と。
「人間はいとも簡単にダークサイドに堕ちるものなのだな」と。
「でもやっぱりおっぱいの魅力には抗えない」と。

血で塗りたくられた映画が、
実は暴力からいちばん遠く離れた場所へと僕を連れてってくれるという事実。
価値観を揺さぶられ、
ゲロにまみれながらも導き出された結論と新たな思考の可能性。

それこそが『冷たい熱帯魚』がくれた最高の映画体験。
刮目して見よ!

posted by キョー at 19:22 | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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