一気に良い方向に行くかと思いきや
自民党参院議員有村治子が、
作品内に登場する刀匠、刈谷氏から事情を聞き「作品内容が聞いていたのと違う。出演部分を削除してほしい」との回答を得た、という事から状況がこじれ始めている。
まったくアチラさんもいろいろと手の込んだことをやってきます。
これはまさに「伝家の宝刀」ですよ。
こう言われちゃ多くの人は「刀匠がそう言ってるんなら、ちょっとマズいかもねぇ」なんて思っちゃいます。
僕も正直複雑な心境です。
でもね。
監督が言っているように、ドキュメンタリーっていうのは監督と出演者の関係性において成り立つものだと思うのです。
誰も傷つかないドキュメンタリーなんてものは有り得ない。
出演した人たちが皆100%満足できるドキュメンタリーなんて…ね。
誰もが何かしらの不満を抱えて当然だし
(それこそ「もうちょっとカッコよく撮ってよ」レベルの不満も含めて)
だからこそ監督と出演者のコミュニケーションの積み重ねが欠かせない。
そのデリケートな部分に全くの第3者が(しかも国会議員だ!)が「何か不満はありませんか?」と介入してくれば、そこで何かが噴き出すのは当然でしょう。
演技ではない、人々の素の生き様が様々な形でスパークする。
カメラを意識しなくなった時に、
醜いものもそうでないものも、その人が思いもしなかった形で露にされる。
それが僕たちの中にさざ波を立たせる。時には嵐を引き起こす。
僕たち観客はそれを味わうのだ。
それを面白いと思うのだ。
それがない(誰も傷つけない)品行方正なドキュメンタリーなんて見る価値がない。
僕はもしかして暴言を吐いているのかもしれない。
でも、やっぱりそうだと思うのだ。
ドキュメンタリーなんて「鬼畜」の所業なのかもしれない。
繰り返すが、だからこそ監督と出演者のコミュニケーションが大事なんじゃないかって思うのだ。
なんて事をここ何日かつらつらと考え、まとまったらブログにアップしようと思っていたら
そもそも刀匠の発言そのものがねつ造ではないかという話が出てきた。
『blog色即是空』
http://d.hatena.ne.jp/yamaki622/20080415
なんじゃそりゃ…。
そして『靖国』とは別だが、
自民党の世耕参院議員がNHKの新会長を参院総務委員会に呼んだうえで
「NHKスペシャルは格差や貧困に偏りすぎ」と圧力をかけたことが明らかに。
『評論家・森田敬一郎の発言』
http://morita-keiichiro.cocolog-nifty.com/hatsugen/2008/04/nhk_e35d.html
NHKと自民党と言ったら数年前に、『問われる戦時性暴力』という番組をめぐって
自民党の安倍晋三と中川昭一がNHKに対して圧力をかけた、かけないの疑惑があったよね。
あれはいわば密室の中の出来事だったが
今回は公の場での圧力。
結局あの時は事実ははっきりしなかったが
あっても全然不思議じゃないって事が今回の件ではっきりした。
公の場でできることが、
密室じゃできないって事がある訳ない。
さらに名古屋高裁が、航空自衛隊のイラク派遣に違憲の判断を下した件について
「そんなの関係ねぇという状況」(田母神俊雄・航空幕僚長)
「いろいろと問題のある、癖のある人だった。最後っぺでああいう判決を出したのか」(中山成彬・元文科相)
「外務大臣を辞めて暇でもできたら読んでみますよ」(高村正彦外相)
などと言いたい放題のエラい人たち。
三権分立の原則をこれっぽっちも尊重する気がない「問題のある」政治家と
見方によっちゃ「破防法」とやらを適用した方がいいんじゃね?ってくらい危険な発言をしている自衛隊トップ。
破壊兵器を大量に持つ集団のトップが
何を言われても「そんなの関係ねぇ」というスタンスならば
国にとってこれ程脅威となる存在はないと思うんだけどwww
さて、
『靖国』、NHKスペシャル、イラク派遣違憲をめぐる体制側の振る舞いや発言を見ていくと
彼らがどんな考えを持っているのかがよく解る。
僕らがこの国のことに関して自らの力で考えることを極端に嫌い、
異論や反論は徹底排除あるいは無視。
政府に都合の悪い事は「偏向」というレッテルを貼り圧力をかける。
僕たちが考え、戦争や暴力を拒否し、ただつつましくも幸せに日々を送りたいと願うことの
何がそんなにイケナイことなの?
そうする事であなたたちの何が脅かされるの?
お金?立場?地位?
あなたたちがそんな事に汲々としている間にも
この国では毎日100人もの人々が自ら死を選んでいる。
原因は色々だろうが、
その人々が少なくとも幸せではなかった事は確かだろう。
自らの現在・未来に絶望し
この国で生きて行くことに絶望し
どこか他の国へと逃げて行く選択肢すら持てずに
自ら死を選ぶ人々が毎年3万人。
それがどこまでも己の欲望に従順なあなたたちが造り出した国だ。
そしてそんな政治家を選んだのが他ならぬ僕たちだという現実に
僕はたまらなく切なくなるのだ。